夏に、上高地から槍ヶ岳(3180m)をめざす人は多い。頂上部分は、槍のようにとがっているので、はしごを使う。
はしごを登っている途中で下を見れば、ゾロゾロと下から人が登ってくる。芥川龍之介の「蜘蛛の糸」のように、たくさんの人が、なにがなんでも頂上にいきたいのと、落ちたくないので、必死にはしごにしがみついている感じがしておかしかった。
槍ヶ岳に最初に登った日本人は、播隆(ばんりゅう)で1826年のこと。英国人ウォルター・ウエストンは、その66年後に登っている。播隆(ばんりゅう)は3体の仏像をおさめたといわれるが、今日は山頂には祠がある。
また、播隆(ばんりゅう)が修行したといわれる洞窟は、山頂から数百メートル下のトレイルの横にある。槍ヶ岳への登頂を、より容易にするために尽力をつくしたといわれる播隆(ばんりゅう)。「よくもまあ、こんなところで‥」といった印象をうけるほど、きびしい場所で、改めて昔の修行僧の志の高さを感じさせる。
今日では、一般人が色鮮やかな服装をして、ほがらかにその横を通過していく。まさに夢さながらの夏景色だ。