標高約1500mの上高地から、標高約1620mの横尾までの道は、梓川にそって渓谷をあるく。徒歩で約3時間かかるが、美しくゆるやかな山道だ。混雑していないのが、またいい。
さまざまな植物が道の両脇にみられ、写真のオオウバユリなどは高さが180センチをこえ、花も大きく、つい立ち止まって見入ってしまった。 この谷は、夏には牛の放牧地になっていたので、1927年にふたつのことが起きなければ、この自然はとうの昔に消えていたかもしれない。
そのできごととは、芥川龍之介の「河童」が発表され、その舞台が上高地であったことと、秩父宮殿下が上高地を訪れたことだ。このふたつのことが、上高地を牛の放牧地から、人気の観光地へと豹変させた。そして……、10年後に地域一帯は、中部山岳国立公園として永久に守れることになった。