メイン州の詩 〜冬の足取り 2013

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by William Ash               画像をクリックしてご覧ください。

この明け方の雨音は 夢のなか?
潤いのある水音は 春の目覚め?

いや いや これが  冬のやりかただ

今年は まず
晩秋に使者を送ってきた
それはまだ 暖かみを残す光のなかで
裸の木々が浮かび上がってくるような午後だった
青い空から 白い花びらのような粉雪を降らしてきた
ほんの数分のことだった

ところが、数日後には
空全体を鳴らして 北極気団が押し入ってきた
弱い木々を 二日間にわたってなぎ倒し
闇にまぎれて 大地を雪で覆っていった

それを見た瞬間 私の心から消えた

たった数センチの雪の下に横たわっている秋が
凪いだ海に浮かんでいたたくさんのヨットが
豊作によろこんだ赤いトマトが
道ばたに咲き乱れていたオレンジ色のユリが 消えた

私は 冬しか知らない北極の生き物になった

蒔きストーブの前にじっと座って
車のフロントガラスの向こうを真っ白にする吹雪を妄想した。
せいぜい5回ぐらいしかない雪かきが
毎日あるかのように思えて心臓が重くなった
証拠にも無く またコートを買うことを考えた

それなのに……

今朝は打って変わって この豊かな雨音が
懐かしい響きをもって 目覚めをさそってくる
カーテンを開ければ
水をたっぷりと吸って 芝は青く
落ち葉は 前よりも一層、色が深い
息を吹き返したのは 秋か それとも我が心の春なのか?

いや いや もう ぬか喜びさせられるのはうんざりだ

見ててご覧!
冬は 今日14度まで気温をあげて溶かしたものを
明日の朝までに 一気にマイナス5度にして
ブラックアイス(注)に仕上げてみせるから
こうして Thanksgivingのパーティーに
はやる心をくじかせて 急ぐ足をすくうのだ

これが  冬のスタイルだ
こうして 冬はやってくる
毎年 人をやきもきさせながら
しかも 見事に 足取りを変えてやってくる

メイン州に住んで7年
11月から12月のこの変わり目が
どうにもこうにも 好きになれない

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先週のThanksgivingの一週間は、快晴だったり、暴風、雨、雪と天候が目まぐるしく変わった。 ときにマイナス25度ぐらいまで下がるメイン州の冬にまだまだ慣れていないので、ほんの冬の入り口でありながらも、この季節の変わり目は落ち着かない。

(注)ブラックアイスとは、路面にできた薄い氷の膜。テカテカと黒光りして見え、アスファルト上の水のようにしか見えないが、実際には凍結しているので、とても滑りやすくハンドルをとられやすいため、非常に危険とされる。

スパータン ~ メイン州のりんごの季節

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スパータン(Spartan)は、マッキントシュ (McIntosh) と不明の品種をかけあわせたハイブリッドのりんごだ。親のマッキントッシュ同様に、万能なりんごだ。サクサクして、ちょっと酸味のある甘さをもつ。

ビーナスのベルト  

先週、アーカディア公園(Acadia National Park)のキャディラック山(Cadillac Mountain)に行ったとき、「ビーナスのベルト (Belt of Venus)」と呼ばれる現象をみた。よく見られる大気現象で、地球の影によって、太陽からの赤い光の下が濃紺になって帯のように広がる現象をいう。日の出または日没に、太陽とは反対側の空で見られる。

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Belt of Venus by William Ash      画像をクリックしてご覧ください

「詩〜染まるバーハーバー」

眼下のあの町に住む人は 今 この優しい光のなかで
夕飯の支度におわれているのだろうか
薪ストーブをたいて 魚を切ったり 野菜を洗ったりしているのだろうか
別荘に週末だけもどった人は
レストランでワインを飲んで ロブスターなど食べているのだろうか
それとも 大雪のまえに別荘を閉めることで頭がいっぱいになっているのだろうか

みんな なんでもいいから 東を見てごらんよ
海までも ピンク色を帯びているよ
ビーナスが みんなに触れているよ

 

 

 

 

Hakusan Creation より Happy Thanksgiving!

life_in_maine_turkey2当サイトにおいで下さりどうもありがとうございます。

すばらしいホリデーをすごされますように!

上の写真はちょっと季節がずれていますが、庭によくやってくる二羽の野生の七面鳥です。これからの寒い季節には、これまで以上に頻繁にやってきます。私たちが肉は食べないことを知っているのでしょうか?最初に野生の七面鳥をみたときは、あまりにグロテスクで大きいので「何者か?」と驚きました。でも、ハンターをのがれて、こっそりと大股で庭にやってくる姿は控えめで、愛情さへ湧いてきます。

静寂の美 〜 アーカディアに訪れた冬

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South Bubble in Acadia National Park by William Ash クリックしてご覧ください

木々の向こうに、
サウルバブル山(South Bubble)のシルエットが浮かぶ。
黄金色の森は、今や、銀色へと変わった。
蜘蛛の巣のように絡みあう枝には
まだ降ってもいない粉雪が見えるようだ。

 

 

 

晩秋のアーカディア国立公園

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Acadia National Park by William Ash  画像をクリックして拡大してご覧ください

 

アーカディア国立公園(Acadia National Park)から紅葉の季節が去ると、
それを追うかのように訪問者もいなくなる。
車道をいく車の数はめっきりと減り、トレイルには人影がほとんどない。
けれど、目を奪うばかりの美しさは、以前としてそこにある。
大西洋を望む森の公園に、静寂のときが訪れた。

この日、カナダからの北極気団が吹き荒れるなかも、
海はおだやかで、鋭い青さが一層、冴えていた。

 

Macoun ~ メイン州のりんごの季節

apples_macoun今年はじめて、このりんごを食べた。果樹園で、お客のひとりがたくさん買い込んでいたので、何にするのか聞いたら、「サイダーをつくるから、毎年たくさん買うのよ」と言われた。店の人によれば、人気があるりんごらしい。買ってみて食べたが、確かにサクサクして甘いものの、もっとおいしいりんごが他にもあるように思える。保存はきかない。このりんごの発音だが、いろいろな読み方があるようなので、英語のままにした。

鳥居 〜 くぐるもの

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東京の明治神宮の鳥居 by William Ash

神社は大好き
長い参道を歩くと 迎えられているような懐かしい気持ちになっていく
大きな木をみると 優しい気持ちになる
お祭りがあれば屋台がでて 大人も子供もみんなが楽しそう
だから神社は大好き

でも わからない
鳥居の内は聖域で 外は聖域じゃない
ということがわからない

神道は八百万の神であり
すべてに神の命が宿るんじゃなかったかしら?
聖域じゃない場所があって いいのかしら?
そんな世界があると 認識していいのかしら?
認識すればするほど その存在は強固なものになるんじゃないのかしら?

鳥居よ なぜ在る?
優美で均整のとれた形がもつ侵しがたい強さは どこから来た?
本当は 何を 守っている?

By Naomi Otsubo
Futon Daiko - William Ash

森の精霊 ~ 晩秋

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メイン州の晩秋は短い。
太陽が地平線に沈むと 、
冬の深いコバルト色だけが、森を貫く光となる一瞬がある。
そのとき、木の幹は、
白骨のような、上っていく精霊のような
冷たい光を発する。