月光につつまれて
樹が 天へのびてゆくとき
影はゆっくりと 地をゆく
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暖気がぬけたあと、水分をたっぷりふくんだ重い雪が降った。雪だるまをつくるのにはもってこいだが、雪かきをする身には‥‥こたえる。常緑樹にもべっとりとついて、そのまま凍りついてしまった。日頃は、落葉樹の葉の色の移り変わりに目がいきがちだが、松やもみ、トウヒといった針葉樹は、冬になると、その貫禄を十分にみせてくる。実に大らかで、雪をまとった姿には、どこか高貴な余裕が感じられる。その足元で暮らしている自分は、さながらホビットというところか。
「仏像」
緑の衣に 白い雪
ゆったりと しなりながら
厳寒の森にたつ針葉樹
見上げる私には
目をふせて
少し微笑んでいるお顔が見えるよう
あなた方は
彫られる前から 仏様
©Naomi Otsubo
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氷点下の日々
湖も 湿地帯も 川も 白
脳内も 白
そこへ ぽつんと
うかんでくる あなた
(写真集 Between Two Rivers: A Year at Bates-Morse Mountain Conservation Areaより)
冬の満月
月明かり 雪明かり
森をゆかば
木と影が溶けあい
みな幻想となり
歩みを止めて 足元を見る
「白松ークリスタルな森の主」
氷は
一本の針すら 見逃さなかった
白松の葉は
ひと針 ひと針 氷でつつみこまれ
落ちた葉は 雪と氷の間で
標本のように閉じ込められた
森は 今
空から放たれた氷の巣の中に沈み
寒風にこすれ合いながら
痛げに メタリックな音をたてている
けれど‥‥
太陽が顔を見せれば
絡みあう氷の網に 光が 一気に走る
無数の網の中を 交差して照りかえしながら
森をきらめかせ
触れたものを容赦なくとらえていた氷を
その輝きのうちに 消していく
かけらに変え
しずくに変えて
森の底へと 消していく
そして
ひときは高い樹冠をもつ白松が
いち早く
青空の息吹の中に 放たれる
メイン州の森の主たる白松は
こうして 数十年 数百年と
厳しい冬を超えていく
輝きの中に立つ
自らの姿を 知っている
(注)
ここでいう白松は、Eastern White Pineとよばれる北米の北東部にみられる白松のことで、中でも、メイン州は「Eastern White Pineの州」とよばれている。樹高が高く、50メートルを超えるものも見られ、成木は200年から250年の樹齢がある。
「アイスストームの朝 12/22/2013」
たとえ
「氷におおわれ、道路はたいへん危険です。」と
天気予報のおじさんが声をあげていても
ドアをあけて一歩踏み出したとたんにすべって転んでも
車がまるまる一台 凍りついていても
クリスマス用のケーキを焼いている途中で停電がおきても
あわてることはありません
たしかに
氷におおわれた低木は どんどん頭を下げて折れんばかり
来年に実をつけるはずのブラックべリーの枝は 雪原で総倒れ
森からはひっきりなしに 枝がもげるように折れて落ちる音がして
しかも 氷雨はいまも森を打っています
けれど‥‥あわてることはありません
本当に息を飲む瞬間は これからです
ひたすら窓の外をみて 待ちましょう
そして 雲間から太陽が顔を出そうものなら
森に入っていきましょう
絶対に見逃してはいけません
すべてが光のかけらとなって輝き
空間がきらめきの音でいっぱいになるあの瞬間を
光の中に こつ然として浮かぶ
神々しいイルミネーションの初まりを
今はわが森で冬眠しているシマリスだって
もし目覚めて その光景を見たならば
びっくりして また目を回すことでしょう
©大坪奈保美2013